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2025年1月27日 (月)

設問46 最近、「統合失調」は「軽症化」したと言われますが、どうしてなのでしょうか?

回答 「軽症化」というのは、曖昧な概念で、みかけの判断に過ぎない面もあるが、かつてと比べると、明らかに異常な振る舞いをしたり、解体して廃人そのもののようなあり方をする例は、確かに少なくなっていると思われる。

それは、決して精神薬の開発によるのではなく、社会の側の統合失調を取り巻く状況、特にイメージの変化によるところが大きい。また、それと関連するが、一般に、統合失調というものが「治り得る病気」として、ある程度知られるようになってきていることも大きい。

さらに、本質的に言っても、統合失調状況のあり方自体にも変化が起こっている可能性があるのだが、それについては次回述べる。

 

解説 「軽症化」というのは、かなり曖昧な概念で、見かけの判断に過ぎないという面もあります。しかし、統合失調において、社会の中で生活することが明らかに困難なほど、異常な振る舞いや、解体して廃人そのもののようになるという状態を呈する人が、かつてに比べて少なくなっているということは、確かに言えると思われます。

私の子供の頃(50年ほど前)から、21世紀に入る頃まで、「分裂病」と言えば、不治の病というよりも、見た目にもすぐ分かる、その人の特性のようなもので、「正常」からは隔絶された、「狂人」そのものを意味していました。病院は「治療」をするところではなく、そういった「狂人」を社会から隔離するところで、「狂人」は当然そうされて然るべき人たちでした。

それは、単に私だけのイメージではなく、周りの子供もそのように見ていたし、大人もそう見ていたのが分かります。そのような、「イメージ」に沿うような明らかに異常な状態を呈する人たちが、実際に、現在より多くいたとみられます。

精神医学的には、「解体型」とか「破瓜型」と言われるタイプで、「緊張型」と言われる型も多くあったようです。設問43で、R.D.レインの『引き裂かれた自己』に触れましたが、まさにそこに描かれたような、自己からも世界からも引き裂かれ、「解体」「崩壊」へと向かうことが運命づけられたかのような人たちです。

そのような、見た目にも明らかに異常な状態を(長い間)呈する人たちが少なくなったのは、精神医学的には、非定型精神病薬のような精神薬の開発によると解されることが多いようですが、けっしてそうではありません

確かに、精神薬が脳の神経伝達の働きに作用して、見た目にも派手な「陽性症状」を抑えるということが多く起こるようになったとは言えますが、反対に、薬の長期的服用により、「陰性症状」的な荒廃状態も増えているわけで、全体として「軽症化」などと言えたものではありません。

ただ、地味な「陰性症状」が増えることより、派手な「陽性症状」が抑えられることの方がよほど与える印象としては強いでしょうから、そのことを捉えて、「軽症化」ということが言われている可能性はあります。

何しろ、ここでは、もっと根本的にみて、このような「軽症化」が起こった理由として考えられることを、簡単にではありますが、3つほど述べておきます

一つは、社会的に共有される統合失調のイメ―ジそのものが、かつてと比べて大きく変わったことです。もちろん、現在でも、「統合失調」のイメージは、他の病気と比しても、「治る」可能性の少ない、酷く深刻なものでしょうが、かつての、「正常」からは全く隔絶されたごとき、とうしようもない「分裂病」のイメージとは、大分変っています。

「統合失調」の場合、そのような社会の側の「イメージ」そのものが、統合失調の者の内心のあり方や、幻覚や妄想の内容にも大きな影響を与え、「規定」するということが確かに起こるのです。

かつては、統合失調の者は、社会から排除されるも同然であり、いやがうえにも孤立を深め、自分の世界に閉じこもって、対社会的にも理解不能の絶望的な反応を示すしかなかったということが言えます。

しかし、少なくとも、かつてと比べると、最近は、社会の統合失調の者に対するイメージは軟化し、その締め付けも緩くなり、そのことが、統合失調の者の外に現れる反応や、振る舞いにも影響していることがうかがわれるのです。

それには、「分裂病」が「統合失調症」と改められたことも影響しているだろうし、「不治」ではなく、「治り得る病気」とされるようになったことも、影響していると思われます。そのようなことが、果たして本質的に、統合失調を捉えているのかどうかは別問題ですが(他の類似の状況にある者も、「統合失調」に含められるようになった可能性がある)、少なくとも「軽症化」という観点から見たときには、影響しているだろうということです。

もう一つは、これも上のことと関連していますが、統合失調という「病気」そのものについて、一般に、一応とも知られるようになってきていることです。最近は、それが「誰もがかかり得る」「精神的な病気」なのであり、「幻覚」や「妄想」という症状を呈するもの、という位のことは、ほとんど一般にも知られているようになっているのです。これには、インターネットの普及ということも、大きく関わっています。

かつては、既に述べたように、分裂病の者は、「病気」というよりは、「狂人」そのものであり、隔離すべきものであって、「正常」からは隔絶されていたので、それについて知ろうとされることもまずなく、実際ほとんどタブー化されていたということが言えます。

そして、そのようなことは、実際に統合失調状況に陥った人にも影響するし、その周りの人にも影響します。統合失調の人は、自分の陥った状態に何の手がかかりもなく向き合うしかないし、周りの者も何か手を貸すようなこともできないのです。いきおい、その混乱状態と妄想世界は、歯止めがきかないものとなります。

最近は、(病気として認識するのではないにしても)かつてのように、何も知り得ないところから出発するのではなく、一応のことは知り得るし、本人も周りも、対処のしようがないものとして、絶望的になるのではなく、治癒や社会復帰に向けての一応の希望も持ち得ます。そのようなことが、混乱状態を緩和するし、幻覚や妄想の内容にも影響するのです。

ただし、この点も、ただかつてと比べての「軽症化」という観点から言っているので、そのような一般の見方が実際に「事実」に沿っているかどうかは別問題です。ただ、そのことは、このブログで述べてきたように、もっと本質的に統合失調状況そのものについて知られるようになれば、単なる「軽症化」というのではなく、もっと本質的な治癒の方向が望めるようになるという可能性を示しているものとは言えるでしょう。

以上の「軽症化」の理由は、統合失調を取り巻く社会の側の変化ということから見られた視点です。しかし、統合失調状況そのもののあり様に着目しても、最近は、そこで本質的な影響を与える側のあり方自体が、変わってきているという可能性もあるのです。それについては、次回述べることにします。

 

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