設問24 「共時性現象」のほかに、「共時性現象」とは言えないものが、「関係妄想」の理由となるというのは、どういうことですか?
回答 2つの場合がある。1つは内心にあることと関わるような、幻聴の「声」を聞いて、それを目の前にする人間が発したものと受け止めることによって、「共時性現象」が生じたのと同じ受け止め方をする場合である。もう1つは、何らかの存在が、意図して、「声」だけでなく、人や物を操作するなどして、共時性現象が生じたかのような「演出」をする場合である。
いずれも、本来の共時性現象と同様、あるいはそれ以上に強力に作用し、関係妄想を強化することにつながる。
解説 前回言ったように、ユングが言う意味での「共時性現象」とは言えないような、いわば「疑似共時性現象」も、「関係妄想」の大きな理由となります。それも、統合失調状況では、前回みた、「共時性現象そのものが関係妄想のもととなる」場合と、同じかそれ以上の影響力があります。
これには、次の2つの場合があります。
1つは、幻聴の「声」を聞くことによって、実際には、「共時性現象」とは言えないような現象が、「共時性現象」であるかのように本人に影響する場合です。あるいは、「共時性現象」であるかのように「演出」されるという場合もあります。
その意味では、次の2つ目のものとも重なりますし、また、本当の「共時性現象」と、もはや区別しがたく、絡み合って起こることもあるので、厄介です。
たとえば、次のような例が想定できます。
統合失調の者は、通りすがりの者など他者の「声」を聞くことが多いわけですが、その他者の「声」は、これまでみて来たとおり、何らかの意味で、自分の内心にあることと関わることを言ってくることが多いです。
たとえば、ある者が、それまでの経緯から、「何らかの組織が関係しているのではないか」という疑いを内心にもっているとします。すると、誰か他の者が、「CIA」という言葉そのまま、または「秘密の」とか「恐ろしい集団」など、それを暗示するような言葉を発するのを聞くのです。それは、本当に、その言葉を発しているのであれば、まさに一つの「共時性現象」と言えますが、幻聴の「声」として聞いた場合には、「共時性現象」そのものとは言えません。
しかし、繰り返し述べるように、そのような幻聴の声は、ただの「幻」ではなく、実際に存在するものです。それが、どのようにして作られるかについては、様々な場合があり得ますが、実際に、何らかの存在が、そのような「声」を(物理的ではない次元で)発しているという場合も、多いのです。そして、その場合には、その存在は、その者の内心にあることを「読んだ」うえで、言ってくることが多いのです。
その存在の意図としては、初めから、「関係妄想」に陥らせようとして「共時性現象を演出」しようとする場合もあれば、その場における、一種の「悪戯」に過ぎない場合もあります。(どのような存在がおり、どのように関わるのかは、後に説明することになりますが、ここでは、以上のことを一応押さえておいてください。)
しかし、「声」を聞いた本人は、そのようなことには考えが及ばず、「声」を目の前にする人物から発せられた物理的な声だと受け止めることが多いのです。そうとすると、それは、一つの「共時性現象」を受け取ったのと同じことになります。それで、まさに、前回みたような、その「共時性現象」を受け止めるときと同じような歪みを生じ、「関係妄想」のもととなるような解釈がされてしまうことになるのです。多くの場合は、それを因果的に捉えてしまって、本当に「組織の者が自分につけまとっているから、このようなことが起こるのだ」と解することになります。
しかし、いずれにしても、このような状況で共時性現象が起こりやすいのは確かなので、それが、何らかの実際の共時性の現象によって補強されたり、あるいは、実際には、共時性現象と区別しがたく、絡まり合って起こっているような場合もあり得ます。そうして、「組織に狙われている」という「妄想」が、厄介にも、強化されてしまうのです。
「妄想のもとには幻覚がある」ということは、設問20で既に説明しましたが、ここでは、さらに「共時性現象」ということを介在させて、具体的に説明したものと受け止めてもらって結構です。
次に、2つ目として、何らかの存在が、意図的に、「共時性現象を演出する」という場合があります。
これについては、1つ目の場合以上に、どのような存在が、どのように関わるのかを述べないと、理解しにくいでしょうが、ざっと、このようなこともあるということを説明しておきます。
1つ目の場合で述べたように、これらの存在は、人の内心にあることを読むことには長けているので、それに関連することを「声」として発することは、簡単なことなのです。そのような「声」を通して、意図的に共時性現象として「演出」をするというのが、一つの場合です。
しかし、これらの存在は、単に「声」として共時性の現象を演出するだけではありません。たとえば、本人が、内心に、「組織に狙われている」というような疑いを持っている場合に、いかにもその組織の人間と思えるような人間をその者と関わらせたり、車その他のもので、いかにも「組織」のものに思われそうなものを目につけさせるなど、それと関わる現象をその者の周りに演出するようなことも、できるのです。
そのような存在が、特に関わらなければ、それは「自然に」起こった共時性現象と言えますが、これらは明らかに、共時性現象として意図的に「演出」されたものです。
人や物質的なものの「操作」を含むので、人間には、理解しがたいことかもしれませんが、これらの存在は、人間のいる次元を超えた(特に時間ということに関して)存在として受け止めれば、理解できないことではありません。
たとえば、平面を超えた三次元空間にいる人間が、平面の二次元空間にいる蟻に、共時性現象を演出できるかということを考えてみます。人間は、蟻の内心は読めないかもしれませんが、蟻は、三次元空間を認識しないので、三次元空間から干渉することで、ある蟻をある蟻に近づけるなど、蟻にとっては、偶然を超えた共時性現象としか考えられないことを演出することはできるでしょう。
比喩的に言えば、それと同じようなことを、これらの存在は、人間に対してなしているということです。
いずれにしても、このような演出は強力なもので、印象も強く、その恐怖も大きくなります。それで、自然の共時性現象の場合以上に、「妄想」を強化することにもなってしまうのです。
「共時性現象」について知るというだけでなく、このような存在について、いくらかでも知るということがないと、なかなかそのような現象を脱け出すことは難しいでしょう。
いずれ、これらの存在については、まとめて述べることになりますが、このような場合が、(おそらく予想以上に多く)あることを、押さえておいてほしいと思います。


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