設問12 無意識領域の体験を「思い出す」ということの例は、夢を思い出すことのほかにもありますか?
回答 夢の場合以上に似た体験として、カルロス・カスタネダが、「高められた意識状態」で、ドンファンから受けた教えや、様々な体験を、後に「思い出し」て、意識化するようになったことがあげられる。それらの体験が、ただの「無意識の体験」なのではなく、一つの「現実」の体験であることを示す意味でも、この例は重要である。
解説 少し特殊な例になりますが、統合失調状況で無意識領域の体験を思い出すことに非常に似たものがあります。それは、人類学者カルロス・カスタネダが、ヤキインディアンのシャーマンであるドンファンから、教えを受けたり、様々な体験をさせられる領域に関わるものです。
カスタネダは、これらを「高められた意識状態」と言われる、通常の意識では感知できない一種の無意識領域で体験しており、後に、「思い出す」という大変な努力をして、意識化することができるようになります。それで、それらを、ドンファンシリーズと呼ばれる本に、報告することができるようになったのです。
意識領域では、認識したり、体験することが難しいような事柄でも、「高められた意識状態」である、無意識領域においては、体験できるようになるということです。実際、カスタネダは、無意識領域においても、意識領域とは別に、ドンファンと様々に交流したり、「精霊」との交流や、「カラスとなって空を飛ぶ」など、日常では普通起こり得ないような、特殊の体験をしているのです。
それは、実際、リアルな体験として体験されるし、その状況は、ドンファンや他の者とも共有されるもので、決して、カスタネダの中で閉じた「幻想」というものではありません。物質的な身体の移動を伴うなど、後に物理的に事実であることが確認できるものもあります。
ただし、それを「思い出す」のは、本当に「大変なこと」であるのは、私も体験したとおりです。これらの体験は、直線的な時間意識が支配する通常の意識の領域にとても収まり難いものだし、そもそも意識が受け入れ難いものとして、排除(抑圧)してしまうものでもあるからです。意識と無意識の溝というのは、特に現代人の場合、それだけ深いものがあるのです。
夢の場合は、睡眠時の体験なので、それが日常の意識とは別の無意識領域での体験というのが分かりやすいと思います。しかし、タスタネダの体験は、統合失調状況の場合と同様、覚醒していて、意識のレベルでは何事かを体験している状況で同時的にそれと並行するように、無意識領域で別の事柄を体験しているのです。
その体験は、意識領域で体験していることの背景で起こっているなど、意識で体験していることに関連していることも多いですが、もはや意識領域での体験からは断絶しているかのような、それこそ「夢幻的」で理解しがたいものもあります。私も、後に述べるように、強力な「悪魔的存在」との出会いや、「精霊」から攻撃を受けることなど、信じがたいことを、初めは、この領域で体験していたのです。
これらの体験は、もはや、単に無意識領域の体験というのではなく、カスタネダのドンファンが説明するように、多様な現実の中の、「もう一つの(別の)現実」の体験というべきものです。あるいは、その体験領域は、「非日常的意識領域」と言われ、「日常的意識領域」とは別に(並行して)存在する、一つの確たる「領域」なのです。
私は、これを「霊的領域」という伝統的な言い方で言いますが、基本的には重なるものとみていいと思います。ただ、初めから、いきなり「霊的領域」に入り込むのではなく、「霊的領域」のものが、この現実世界に重なるようにして、侵入してくるという感じになります。
ルドルフ・シュタイナーという神秘学者は、霊界に入る前に、この世界と霊界との境界領域である「霊界の境域」に入る、という言い方をしますが、この「霊界の境域」という言い方は私も適切であると思うので、ブログ『狂気をくぐり抜ける』の方でもよく使っています。
いずれにしても、無意識領域の体験であるからと言って、それは全くの「幻想」とか「事実でない」のではなく、通常の意識領域での体験とは異なる、もう一つの「現実」である(可能性がある)ということを、ここでは押さえておいてほしいと思います。
このような領域の体験を、ただの「幻想」や「混乱の反映」とみている限り、統合失調状況の理解などできるものではないと断言できます。
そして、私のように、その無意識領域の体験を思い出して「意識化」することができるようになると、それは、もはや無意識の体験ではなく、まさに意識がリアルタイムで体験する「現実」そのものとなっていくのです。それについては、また改めて、説明していきます。
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