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2024年8月14日 (水)

設問6 「統合失調の原因の重要な要素は憑依現象である」ということですが、どのような意味で、「重要」なのでしょうか?

回答 一言で言うと、「統合失調の<最も統合失調らしい>部分の現われの、原因となる」からである。それは、統合失調の発症の前ではなく、現に統合失調を発症した状況で、受ける影響が大きな部分である。この部分に目を向けない限り、統合失調の具体的な理解は望めないのである。

解説 本当は、統合失調の原因と考えられるものを一つ一つあげていって、その中で、特に「憑依」現象が重要であることを示した方がいいのですが、それをするのは、もう少し後のことになるでしょう。

ここでは、原因として「重要」であるということの意味を、感覚的に分かり易く、端的に示しておきます。それは、一言で言うと、「統合失調の<最も統合失調らしい>部分の現われの、原因となる」ものだからなのです。

統合失調の人は、幻覚や妄想に振り回されて、混乱または錯乱し、周りの人にとっても、いかにも「危うい」感じを与えます。周りの人にとっては、あり得ないと思われることを、強く確信して、訴えてきたり、それに基づいて行動したりします。周りの人が、どのように説得しても、聞き入れる様子がありません。その内容は、「何かの組織に迫害される」というものが多いですが、ときに、宇宙人や神が出て来て、この世の終わりを説いたり、突拍子もないことをするようなものもあります。

そにには、どことなく「無気味」で「異様」な感じ、「おどろおどろし」く、「信じがたい」要素がまとわりついています。

統合失調は、「了解不能」とも言われるように、他の精神病とされる「病気」に比しても、明らかに、理解しがたい、不思議な部分があるのです。それこそが、人々に、本能的と言ってもいいような、「危険」な感じを与え、関りを避けようとさせ、病院などへ「隔離」させる必要を感じさせるのです。

また、このような信じがたい部分が本当には納得できないために、これまで言われて来た「原因」というものが、十分に認められることがなかったのです。「脳の病気」とか「頭がおかしい」というのも、とりあえず、「分かったこと」にするための、レッテルのようなもので、これで本当に心から納得するという人は、あまりいないと思います。

このようなことこそ、「統合失調の最も統合失調らしい」部分の現われだとすれば、そのようなことの原因となる主たる要素が、「憑依」によっている、というのが、「統合失調の原因の重要な要素である」ということの意味です。

実際、「憑依」ということを鑑みることなくして、統合失調を本当に理解することなど、無理と断言できるし、近代以前または西洋近代以外の文化が、普遍的と言っていいほどに、このような現象を(大枠として)「憑依」とみなしてきたことには、それだけの理由があるのです。

しかし、近代社会は、それらを、まさに「おどろおどろしい」「不合理」のものへの「怖れ」のため、「排除」してしまったのです。

先に、統合失調の原因は、具体的には後に見ると言いましたが、一つの大枠的な捉え方を示しておきます。統合失調の原因を、元々の先天的な性質、発症するまでの過程で受けた影響、発症してから受ける影響の三段階にしぼってみることができます

そうすると、それは、次の図のようになります

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元々の性質に精神面と身体面の特性があることは分かり易いと思います。元々の脳の脆弱性があれば、それはこれに入りますし、憑依という観点から、「霊媒体質」というのも、身体面の遺伝的な性質があると言えます。また、発症するまでに受ける親の影響や不適応感、様々なストレスが作用するというのも分かると思います。

しかし、精神医学にしても、精神病理学や精神分析にしても、原因を探るというときに考慮するのは、ここまでの段階で、発症してからの影響などには目を向けないのです。それは、発症してしまうことが、幻覚や妄想という症状に陥るという「結果」なのであって、もはや「原因」の問題ではないからということになるのでしょう。具体的には、発症することにおいて、自己または脳の働きが大きく「阻害」ないし「崩壊」されてしまっていて、幻覚やら妄想も、単にその表れの一つに過ぎないとみるからです。

ところが、実際には、発症して、「幻覚」(特に幻聴)を明白に見たり聞いたりすることが、その後の状況に大きな影響を与え、「妄想」の内容にも大きく影響を与えるのです。いわば、そこからが、本当に統合失調らしい現象に遭遇する入口なのです。

先に見た、異様な混乱や錯乱、無気味でおどろおどろしい要素など、周りから見ても、「統合失調の最も統合失調らしい」現われというのも、このことから生じてくるのです。そして、そのような状況を起している主要な原因こそが、「憑依」現象ということなのです。

精神医学にしても、精神病理学や精神分析にしても、この部分を、単に病的な結果の現われに過ぎないものとみなして、具体的な関心を向けないがために、最も統合失調の統合失調らしい部分を取り逃がしてしまっているのです。

 

※ ここまでの設問で、全体のごく大まかな総論的な部分を提示できたと思います。これから、具体的、細目的な部分を少しずつ明らかにしていきますが、それについても、これまでのように、まず総論的なことを述べて、徐々に細目的な部分を明らかにていくスタイルをとることになると思います。

 

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