米国防総省はUFO・宇宙人への関心の火消しに走る
記事『米UFO調査機関新設の意図』で述べたように、米国防総省は、2021年に未確認飛行物体の調査機関を設置していたが、先日、その調査報告として、次のようなことを発表した。
〇「未確認飛行物体の目撃報告が地球外の技術の存在を証明するという根拠はない」
〇分析可能なデータが存在するケースを分析したところ、ほぼすべての(他の報道機関では「ほとんどの」と表現されている)報告が「普通の物体や事象の誤認だった」
〇「米政府、企業などが地球外技術を入手し、構造分析をした根拠は見つからなかった」
(日本経済新聞の報道記事 参照)
この記事でも触れられているが、このところ、メディアでは、米下院のUFO公聴会での元米軍関係者による証言のことがよくとりあげられていた。元海軍パイロットは、そこで、「米政府が地球外技術を入手し存在を隠蔽している」と証言して波紋を呼んでいたのである。
今回の調査報告は、まずもって、これらの公聴会での証言を、米国防総省として明確に否定することを意図したものと思われる。
UFO公聴会での元米軍関係者による証言は、前に記事『「公開プロジェクト摘要書」について』でもとりあげていた、グリア博士の主導する公開プロジェクトにおける元米軍関係者の証言とも一致しており、実際、そのプロジェクトに関わった者も参加しているようである。
ところが、この公聴会は、初めはメディアでもよくとりあげられて話題になったが、その後、メキシコの議会でUFO研究家が、宇宙人のミイラと称するものを持ち出してセンセーションとなり、それが分析の結果動物の骨をつないでできたものと報道されて後は、急に話題としてもとりあげられなくなっていた。( 報道記事 参照)
これには、UFO公聴会の話題性や(この件には関係しない)米軍関係者たちの証言の信憑性をも同時に削ぎ落そうする、かなりあからさまな情報操作の意図も疑われる。
そして、今回の国防総省の発表は、それに追い打ちをかけるように、公聴会での証言をはっきりと否定しにかかることになった。
「未確認飛行物体の目撃報告が地球外の技術の存在を証明するという根拠はない」という言い方は、(そもそも「地球外の技術の存在の証明」とはどういうことを言うのか、という問題もあるが)、地球外の技術の存在の「可能性」を正面から否定するものではないし、「ほぼすべての(他の報道では「ほとんどの」と表現されている)報告が「普通の物体や事象の誤認だった」というのも、地球外から来ているものがある可能性を、正面から否定するものではない。
しかし、この発表は、そのような可能性が、とりえず現在のところ、ほとんど認め難いものであることを、明らかに示すものではある。かつて空軍の調査機関、プロジェクトブルーブックが閉じられるときに出された報告書、「コンドン報告」とほとんど変わらない内容にまで後退している感がある。(記事『米UFO調査機関新設の意図』参照)
何しろ、UFO公聴会の米軍関係者の証言に関しては、ほぼ正面から否定したのである。
記事『米UFO調査機関新設の意図』でも述べたように、支配層は、「宇宙人の脅威」を「世界統一政府」樹立の、最終兵器のように利用したがっている。しかし、現時点において、正面からUFOや宇宙人の存在を認めることは、パニックになることが予想されることや、その宇宙人がどのような存在であるのかなどへの関心をあまりに喚起し、その多くが知れてしまう可能性があることなど、支配層にとって大きなマイナスの可能性も抱えている。
だから、これまで彼らは、UFOや宇宙人については、正面から認めるのではないが、同時に正面から否定することもなく、可能性としては含みを残しながら、曖昧にしておきたかったのだと思われる。曖昧なまま、必要以上に一般の関心を喚起することなく、いざというときに、かなり突発的に「宇宙人の脅威」を演出することで、「世界統一政府の必要性」を決定的にアピールしたかったのである。
しかし、今回の発表は、明らかに、そのような計画を犠牲にしても、現在の公聴会の証言を正面から否定し、一般のUFOや宇宙人に対する関心も、火消しするという必要に迫られたものということができる。それだけ、公聴会の証言と人々の反応には、危機感を感じていたということにもなろう。
実際、このような支配層の意図どおりに、この問題が終息してしまうのかどうかは、怪しいものだし、支配層としても、やはり完全に事態が終息することまでは望まないこともあるので、今後のUFOや宇宙人関連の出来事の動向が注目される。
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