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2015年6月14日 (日)

シュタイナーの「精神病論」1

これまでにも、何度か参照にして来たシュタイナーの「精神病論」(統合失調論)だが、今回は、一通り、まとめてみることにしたい。 

シュタイナーは、一般に、あるテーマについて、あまり要点をまとめる書き方や話し方をせず、著作や講演ごとに、さまざまな角度から述べることで、全体像を浮かび上がらせようとすることが多い。それは、霊的な事柄について、短絡的に、捉えられることを恐れるためだろうが、要点がつかみにくく、著作も多数にのぼるので、全体像をつかもうとするのは大変なことである。

「精神病」に関しても、私はよくは知らないが、著作や講演で触れられているものは多いはずである。また、「精神病」については、確かに、多くの観点から見られてしかるべき事柄であり、実際シュタイナーも、ときに相反すると思えるような、大きく違った視点から述べていることもある。だから、注意しないと、シュタイナーの「精神病」に関する考えを、ある著作を読んで、一面的に捉えてしまう恐れがある。しかし、一方、だからと言って、それらの多くの著作をいちいち追っていたら、きりがないし、焦点がぼやけるという欠点もある。

そこで、私は、次の3つの観点に絞って、まとめるのがよいと思う

1は「物質的基盤」という観点。2は「霊界の境域での体験」という観点。3は
「カルマ」及び「ルシファーやアーリマンとの関わり」という観点である。

これらは、それぞれ代表する著作と対応しており、3つの観点との対応を示すと、次のようになる。

1  「物質的基盤」という観点―『病気と治療』(イザラ書房)
2  「霊界の境域での体験」という観点―『いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか』(ちくま学芸文庫)(以下『いかにして』と略)
3  「カルマ」及び「ルシファーやアーリマンとの関わり」という観点―『シュタイナーのカルマ論』(春秋社)

まず、1について

これについては、記事『「分裂病」と周辺領域の病との混乱』(http://tiem.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-acc7.html)でも簡単に触れていた。シュタイナーは、この書で、「精神病」について、「精神病は、実際には精神病ではない。精神は病気になることはないから」ということを述べている。つまり、肉体的なものの方に、原因があると言うのである。また、「精神分裂病」という病名をはっきりあげたうえ、「幼児期に、(神経を阻害する)よくないものを食べたのが原因」とも述べている。(ただし、それがどのように働くかについては、多分に霊的な面もみている。)

霊的なものを重視するシュタイナーとしては、全く意外な観点である。だが、これは、文字通りに解するには問題がある。まず、初めの「精神は病気にならない」の「精神」は(「ガイスト」の訳として)「霊」と読むべきものである。シュタイナーも、病気とは、人間の4つの構成要素間の不調和から生ずると言っているので、霊的なものと肉体的なものとの関わりに起こる「魂」ないし「精神」は、病むことになるはずである。ただし、「霊」そのものが病む訳ではないという意味では、そのとおりと言え、それ故、「精神病」においては、肉体という「物質的基盤」の方に、原因の多くがかかることがあるということは、確かに言えることだろう。

また、「精神分裂病」については、「青年期かそれ以降に痴呆化すること」と述べており、「早発性痴呆」という当時の言われ方そのままの理解で述べている。当時としては、「精神分裂病」の概念も、曖昧であり、人により、捉え方も大きく異なっていた。私は、シュタイナーがここで想定していたのは、今の「統合失調症」も含み得るにしても、どうも、それとは違ったものではなかったかと思う。恐らく、今で言う「自閉症」や「知的障害」の方を、主に念頭においていたのではないかと思う。

いすれにしても、当時から、神経を阻害する物質の影響を重視していたのは、慧眼だし、私も、前回の記事でも述べたが、「統合失調」についても、その影響が大きく働くことは確かと思う。

何しろ、シュタイナーは、次に述べるように、精神病や統合失調症を全体として見る限り、決して、肉体や物質的な原因ばかりを重視していたわけではない。
       
しかし、この書では、肉体的、物質的原因について、特に注意を促していることは確かである。そこで、ここでのシュタイナーの記述は、「精神病」あるいは「統合失調症」については、一般に、精神的な面にばかり注意がいきがちだが、「肉体的、物質的なものに、原因の基盤がある」こと、それも「食物等の後天的な影響」を、看過してはならない、ということを強調した、という風に受け止めるのが、適当と思う。

実際、脳、神経に脆弱性を抱えていれば、それは、統合失調状態を招きやすい基盤となるし、その状態での耐性も弱くなる。それは、先天的な遺伝という形でも起こり得るが、シュタイナーが述べているように、後天的な影響という形でも、起こり得るものである。この点は、「精神病」を生得的なものとみる立場からも、精神的なものとみる立場からも、一つの盲点のようになっているので、看過してはならないということだろう。

しかし、このような、物質的な基盤のみでは、「精神病」や「統合失調症」に陥る一定の条件は、明らかにできても、具体的に、それに陥るメカニズムは、理解できるものにならない。また、そればかりを重視するのでは、現代の精神医学と何ら異ならず、薬などの物質的治療手段を正当化するのと変わりないことになる。

実際、次に見るように、シュタイナーは、霊的な面においても、多くの理解の可能性を与えているのである。

次に2について

これについても、記事で何度も述べ(たとえば『「霊界の境域」と「思考・感情・意志」の「分裂」』(http://tiem.cocolog-nifty.com/blog/2007/03/post-deb9.html)、関連書籍の『いかにして』のところでも、簡単に触れている。この『いかにして』は、あくまで、自ら主体的に行う、霊的な修行において、感覚的な世界から霊的な世界へ移行する際に、その「境界」的な領域で起こることを、説明しているものである。そこでは、特に「精神病」や「統合失調症」のことが、テーマとして述べられている訳ではない。

しかし、そのような霊的修行の実践者が、初めに、「霊界の境域」に参入するときに、起こるさまざまな現象や、それが招く混乱は、あまりに「統合失調」の場合と、共通している。たとえば、「霊界の境域」では、霊界の客観的な性質が見える以前に、自らの想念が、「霊的鏡像」として跳ね返ってくるなどのことである。だから、それについての認識がないと、自らの想念が投影されたものを、「現実」そのものとして受け取ってしまい、混乱し、あるいは誤謬(妄想)のもととなるのである。

さらに、「人格の分裂」という章では、まさに、「分裂病」そのままのことが述べられている。「霊界の境域」にそれなりに深く参入する頃には、「人格の分裂」すなわち、「思考・感情・意志」の分裂が起こるという。それは、もともと、人間の構成上、宇宙的な作用力により統合されていたものだが、この段階においては、分裂するので、それぞれが、ばらばらになり、それらのバランスが取れていないと、どれかが勝手に暴走することになる。まさに、「分裂病」においてみられるままの、異常な事態が起こるのである。ただし、それは、自然な統合を超えて、高次の自我にり、新たな(主体的な)「統合」を果たす契機として、必要なものである。「思考・感情・意志」に支配されず、自由に使えるものにするということであり、それが、霊的な領域にさらに深く入って、認識を高めるためには、必要な過程というのである。

繰り返すが、これらは、霊的な修行により、自ら意図して、「霊界の境域」に参入しようとする場合について、述べたものである。

しかし、「霊界の境域」には、さまざまな理由から、意図せずに、つまり「望まずに」入ってしまう場合もある。特に、体質的に、霊媒体質であったり、自我が希薄であったり、脳が脆弱であったりする場合には、そういうことも起こりやすい。シュタイナー自身は、この書において、特にそのようなことは想定していないが、その場合にも、シュタイナーが述べているようなことは起こるのである。それはまさしく、「統合失調」状況そのものであり、予期もなく、「望まずに」入っているだけに、意図して入る場合以上に、混乱と病的事態は、拡大されるのである

先にみたように、シュタイナーが、「分裂病」について、どのようなイメージをもっていたかは不明で、恐らく、この場合は、シュタイナー自身のイメージとは合致していなかったのかもしれない。が、それは、期せずして、「分裂病」に陥る過程を、非常に具体的に示す、格好のものとなっているのである

そこで、この書の「霊界の境域」に入ることで何が起こるかを記述した部分は、シュタイナーの「統合失調症論」として受け取ることが、十分可能なのである。さらに、そのような状態にどのように対処すべきかも、意図的に入る場合と本質的な違いがある訳ではないので、大きく参考になるものかあるのである。

次回は、これまであまりとりあげていなかった観点である3について、少し詳しく述べようと思う。

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