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2013年12月17日 (火)

『心の病の「流行」と精神科治療薬の真実』

精神薬について、いくらか勉強し、本も読んだが、特に良かったのが、ロバート・ウィタカー著『心の病の「流行」と精神科治療薬の真実』(福村出版)だった。

著者は、アメリカのジャーナリストで、扱っているのは、アメリカの事例である。が、精神医療がどのように行われているかの実態と、精神薬によってこそ「病気」が作り出されていることを、豊富な研究資料と取材に基づき、詳細に、申し分のない説得力で、明らかにしている。もちろん、日本においても、大枠で当てはまることだし、むしろ、薬治療への依存度はより高いのだから、より当てはまるともいえる。精神医療における、精神薬の使われ方や、それがもたらす作用(害悪)について知りたいなら、この本は決定版と言っていいだろう。特に、精神科医にこそ、必読である。

恐らく、精神医学に限らず、あらゆる領域を含めても、非常に優れたドキュメンタリーの一つになっていると思う。500頁を越える大冊だが、文章は(翻訳も良く)読みやすく、無駄のない論理的な記述なので、読むのも苦にならない。ただ、じっくり受けて止めて、読むことになるので、時間はかなりかかってしまう。

十分明解なので、へたに内容を紹介するより、読んでもらった方がいいのだが、ほんの要点だけ述べておく。

著者の問題意識は、精神薬は、確かに短期的には、効いているようにみえる。しかし、それなら、なぜ精神疾患は、激しく増えるばかりで、減少しないのか。実際に、精神薬で治療した者の長期的な転帰は、どうなのかということである。そこで、そのような転帰に関する研究資料を丹念に調べ、また自ら多くの患者を取材している。そうしたところ、その結論は、薬を服用し続けている患者は、薬をまったく飲んでいないか、中止した患者に比べて、社会に復帰を遂げられていないことが多く、転帰が悪いというものである。つまり、長期的には、薬を飲んでいないか、中止した者の方が、回復が良いということである

それで、なぜそうなるのかについても、多くの研究資料を追及し、明らかにしている。結局、精神薬こそが、その副作用や離脱症状で「病気」を悪化させ、あるいは「作り出」し、回復困難な状態をもたらしていたのである

しかし、精神科医は、そのような状態を、薬によるものではなく、病気によるものと決めつける。つまり、それは、「もともとの病気」の悪化または新たな病気の発症と捉えるので、さらに薬は増やされ、または変えられていく。そうやって、一種の悪循環により、薬はますます多剤多量化し、病状はますます悪化して、一向に回復しないことになる。このことが、特定の病気だけでなく、あらゆる病気について、明らかにされているのである。

そして、精神薬について、このような重大な認識の相違をもたらす、一つの大きなポイントを明らかにしている。

それは、記事(http://tiem.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-e17a.html )でも述べたが、『もう少し知りたい統合失調症の薬と脳』という本にも、薬が「効く」ということよりも、薬を「止めてはならない」ということの、大きな根拠として、薬を止めると、「再発」する可能性が高くなるというデータがあげられていた。つまり、一旦服薬をしていた者が、薬を止めると、「再発」する可能性が高まるということを根拠に、「薬を継続して飲まなければならない」とされていてるのである。しかし、私も指摘したが、この「再発」とは、あくまで、そこで出て来た「症状」を、もともとの病気に結びつける、主観的な「解釈」である。

著者は、この「再発」とは、実は、薬を止めたこと自体から来る、一種の「離脱症状」(退薬効果)であることを、説得的な研究資料に基づいて、明らかにしている。

脳は、精神薬の作用を受けると、その作用があることを前提に、それに補償的な働きをして、調整しようとする。(たとえば、ドーパミンの受容体をふさぐものなら、脳は受容体を増やして、ドーパミンの効果を高めようとする。)その状態において、精神薬が止められれば、その補償的な作用だけがそのまま継続して働いてしまう。つまり、一種の「リバウンド効果」として、脳内伝達物質のアンバランスな状態が生じ、それが、「再発」とされる「症状」を引き起こすのである。

だから、そこで精神薬を与えれば、確かに、一旦は、その「リバウンド効果」としての「再発」は治まる可能性があるが、長期的には、精神薬に依存するしかなくなり、脳はそのままかき乱され続け、副作用は拡大して存続するばかりである。要するに、麻薬を切らしたら、「禁断症状」が出るので、飲み続けなくてはいられなくなるが、その結果、精神が荒廃するのと同じである。

著者は、精神薬が普及する以前から、このように、精神薬の効果に否定的な研究がかなりあったことを明らかにし、製薬会社や、精神医学会により、それらは握り潰されて来たことをも明らかにしている。

著者は、「反精神医学」者ではなく、精神医学そのものをも否定するものではないが、精神薬の普及に関しては、明らかに、意図的な「悪意」のようなものをみている。

実際、具体的にみても、このような「精神薬による病気作り」のパターンというのは、単純明快なもので、ほとんどマニュアル化されて施行されていると言っていいものである。

次回にでも、この「精神薬による病気作り」のパターンを、具体的に図で示して明らかにしたいと思っている。それは、「うつ病」から「双極性障害」(そううつ病)、「統合失調症」まで、「何でも手軽にお作りします」というくらい、よく整えられた「メニュー」なのである。
                                                         
精神薬の実際の効果については、民間の研究でも、一部で、既にここまで明らかにされていたのだから、「支配層」と製薬会社の組んだ独自の研究では、このような結果は予め明白に予期されたうえで、意図されていたものと言わねばならない。病気は、「作るべくして作られていた」ということである

さすがに、現場の医師のレベルでは、「意図的」とまで言えるものではないだろう。しかし、いかに、そのようなシステムにただ使われているだけの、「無知無能」のあり方をしているかということである。それは、「狂気」=「悪玉」、「薬」=「善玉」という単純な二分法、「狂気」は放っておくと酷いことになる「とんでもない病気」という思い込みが、ドグマ的に植えつけられ、それを一歩も越えることができないということでもある。

このようなドグマ的な観念を覆すうえでも、この本の長期的転帰に関する研究の報告は、重要な意味をもつはずである。さらに、前にみたように、今後、精神薬からの脱却が図られ、脳科学的な治療法に移行することが予測されるが、その際にも、この長期的転帰に関する事実は忘れられてはならない。「狂気」は、「放っておかれる」ことよりも、「精神薬で治療される」ことにより、酷くなったものなのである。つまり、「是非とも取り除かなければならないもの」などという前提に立つことは、許されないということである。

かつてとり上げた、『なぜうつ病の人が増えたのか』(冨高辰一郎著)では、SSRIのような抗うつ薬が、日本に出回るようになった結果、日本にうつ病が増えたことを、豊富なデータに基づいて明らかにしていた。それは、「うつ病」が増えたのではなく、製薬会社のプロモーションにより、病院にかかる人が増え、「うつ病」と診断される人が増えたということなのであった。

しかし、この本では、さらに豊富なデータに基づいて、SSRIに限らず、あらゆる精神薬の開発と普及が押し進められた結果、うつに限らず、あらゆる精神疾患が爆発的に増えたことを明らかにしている。そして、それは、単に、病院にかかる人が増え、精神疾患と診断される人が増えた、などというレベルのことではなかった。その「精神薬自体が、病気を作っていた」のである

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