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2013年11月13日 (水)

「支配層」と「精神医学」「製薬会社」の結びつき

前回の図にも示した、「支配層」と「精神医学」「製薬会社」の結びつきについて。

かつて、大雑把に30年ほど前は、「支配層」と結びついている産業といえば、まず「軍需産業」だった。冷戦期でもあり、国家の多額の資金を投入され、高度な重科学技術とも結びついた、いかにも華やかな巨大産業だった。「軍産複合体」として、一産業レベルを越えた、巨大な力を発揮した。

次には、「石油メジャー」だった。石油は、個人の生活から、産業社会を支えるエネルギー資源として、不可欠かつ重要なものだった。これを牛耳るものが、経済を牛耳るとも言われた。原発が普及することによって、以前ほどの力は失ったとしても、巨大な影響を与え続ける一大産業であることに変わりはなかった。

また、いくらか後には、「穀物メジャー」がそういうものとして、注目された。穀物は、当然ながら、食べなければ生きていけない不可欠の食料であり、人間の健康にかかわるという意味でも、重要な影響力をもっている。初め、メジャーが、流通を支配することが注目されたが、バイオ技術の発展により、製造業も、一大巨大産業と化した。

それらに対して、「精神医学」はと言うと、当時は、いかにも地味で、光の当たらない「業種」だった。精神病院とは、要するに、「頭のおかしい」人を隔離しておくための、(恐ろしい)施設だった。人里離れたところに、ひっそりと建っていた。子供の頃から、子供心にも、精神病院とはそのようなものだと思っていたし、周りもそうだった。そもそも、精神医学なるものが、表に取り沙汰されることなどめったになかった。

「製薬会社」も、既に重要な産業として、台頭はしていただろうが、特に注目されるようなものではなく、比較的地味な産業に過ぎなかった。「精神疾患」に関しては、そもそもまだ、薬物治療が中心的なものとして行き渡ってもいなかった。

私が、一連の体験をした20年ほど前でも、このような事態は、それほど変わっていなかったと思う。「精神病院」は、いかにも「権力的」で、「恐ろしい」ところではあるが、地味で、日蔭の存在である。それが、「支配層」と結びついているなどいう発想は、ないに等しかった。

一連の体験では、「分裂病」といわれるものについて、身をもって体験して、それが「精神医学」では、絶望的に理解不能であることを知った。もちろん、何をされるか分からない「恐さ」もあってだが、それで、「精神科」にかかるなどという発想は、完全に除外された。そうして、「精神医学」のやっていることは、一種の「虚偽」か「ごまかし」であるという、今に通じる考えになった。しかし、だからと言って、「精神医学」が、「支配層」と結びついて、陰謀めいた力を発揮しているなどと思ったわけではないのである。

その後も、大体において、そのような認識は続いた。だから、私も、「精神医学」や「製薬会社」が、「支配層」と結びついているという発想を、明白にもったのは、割と最近のことになる。

しかし、考えてみれば、「支配層」の側にしてみると、「精神医学」に目をつけずして一体何に目をつけるのだ、という話になるのである。

何せ、「精神科医」とは、人の脳または精神を、直接「いじっ」て、変えることの許される唯一の職種なのである。誰も、他人に、自分の脳や精神をいじられたいとは思わないだろう。それが、正当な業務行為として、ときに強制的なやり方で、許されるのである。

また、これは、「製薬会社」の技術力の発展によって、精神薬が普及したことにこそよるが、「麻薬」まがいの、脳と精神に大きな影響を与える薬物を、自在に投与することのできる職種なのである。いわば、「人を生かすも殺すも」自由な職種である。こんな「薬物」は、一般には規制され、一部では商売とマインドコントロールのために使用されている。それを、合法的に、正々堂々と投与することのできる唯一の職種なのである。

「製薬会社」も、もちろん、このような薬物をさまさまな視点から研究し、開発し、大量生産し、提供することのできる巨大産業である。

人を「支配」するうえで、これ以上に「使える」ものはない、というほどの代物なのである。

もちろん、これらには、軍需産業のような華やかさはないし、相変わらず、地味で表にのぼりにくい産業ではある。また、これらは、所詮「病気」に関わるものであり、一般的な産業基盤ではないともいえよう。しかし、記事『世間教の二本柱』( http://tiem.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/post-dc71.html )でも述べたように、「病気」ということこそ、人を不安に陥れ、主体性を奪うまたとない機会なのである。つまり、それを拡大して、多くの者に適用することさえできれば、「支配」という意図には、十分過ぎるほど沿うものである。

また、地味で、あまり人の注目にのぼらないということは、むしろ利用するうえで、都合のよいことである。そこに働きかけ、力を及ぼすことも、表ざたにはなりにくく、まさに、「やりたい放題」の基盤となるからである。

但し、このように、「支配層」の力が及ぼされるとは、「表立って」、より権力的で、暴力的なあり方を示すようになるなどど勘違いしてはいけない。むしろ、「彼ら」は、イメージ戦略として、より「よい」もののように見せかけて、いつのまにか浸透させる術に長けている。資金力も豊富で、メディアなどを巻き込んで、洗脳効果をうまく使う。

たとえば、ロックフェラーにしてもビル・ゲイツにしても、表向きの、慈善活動家としてのイメージ作りは見事である。それだけのノウハウがあり、そのようなものを築き上げるだけの、豊富な資金力もある。

「支配層」も、そのようなノウハウを使って、かつての「精神医学」または「精神医療」の、「暗く」「陰湿」なイメージを大幅に変更し、人びとが近づきやすいものにすることに、概ね成功したのだと言える。さらに、「精神疾患」という、「不治」なるイメージをも変更しつつ、それを拡大して、多くの者に広めることに成功したのだと言える。

少なくとも、かつての「精神病院」の、「頭のおかしい人を隔離しておく(恐ろしい)施設」というイメージは、ほとんど払拭された。精神科は、文字通り、「病気を治療してくれる専門家」というイメージとなった。「病気」を治療してくれる「薬」というイメージが、その媒介となり、精神科の領域にも、大した違和感もなく、入り込むようになった。

かつての、いかにも汚く、陰湿な精神病院は、きれいで近代的な作りのクリニックに変わった。「うつは心の風邪」のようなキャッチフレーズが多く作られ、精神科を庶民の近づきやすいものにした。国はもちろん、学校や地域などにも働きかけ、多くの者を、「精神科」につなけげることを促すシステムを作り上げた。

精神科医も、ほとんどマニュアル化された、そのようなシステムにのっかるしかない事態になった。というよりも、そのようなマニュアルによってこそ、育てられるようになった。薄々事態に気づきつつ、あるいはそうと知りつつ、自らの儲けのため、意識的、半意識的に、このようなシステムを利用している者もかなりいるだろう。しかし、まだかなりの数の精神科医が、このようなシステムに気づくこともなく、能天気に乗っかり続け、あるいは薄々気づきつつも、もはやどうすることもできずにいるのだと思う。

何しろ、かつてのイメージからすれば、驚くような転換を成し遂げたのであり、それはそれで、見事と言わざるを得ない面がある。しかし、それらの「イメージ」は、あくまで「表向き」のことである。実際に起こっていることと言えば、かつてと相も変わらず、「暴力的」な事態であるのは、明白である。精神薬により、病気はより深刻化し、回復困難になる。あるいは、精神薬による「導入」によってこそ、本当に困難な「病気」が作られていく。「病気」のせいにされつつ、衝動的自殺や暴力など、社会的にも、多くの混乱や問題が巻き起こされる。

「支配層」が力づけする以上、それは当然の結果なのである。つまり、もともとの精神医学のあり様と、実質的には何も変わっていないばかりか、むしろそれが肥大化し、拡大されているのである。そのようなことは、初めから、明確に「意図」されていたことと言わねばならない

私も、こういったことは、ある意味で、知らぬ間に、「盲点」をつかれて、なされたような思いがある。私自身も、最近の精神科のイメージ作りには、多少騙されていた面かある。かつての、あからさまな排除と権力のあり方は、さすがに変わらざるを得なくなったのだろうと思っていた。薬も、新しいものは、より副作用が少なくなるのが、自然のことだと思っていた。しかし、これらは、本当に「表向き」のことでしかない。

ただ、私は、基本的には、かつての「精神医療」のイメージを持ち続けていたし、それらが払拭されるなどということはあり得なかった。しかし、昔のイメージをあまりもたない、最近の若い人たちが、こういった医療に「騙される」のも、理解はできるというものである。

「精神医学」という、人の通常問題としない、日蔭の職種こそ、これまでのどのような「派手」な産業にもまして、「支配層」が支配力を貫徹できる、格好の道具だったのである。

「精神薬」についても、麻薬などとも絡めて、いくらか勉強したが、知れば知るほど、これほど、人を支配するのに適した物質はないということが分かる。

いずれ、精神薬についても、私なりのまとめをしてみたいと思っている。

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