「統合失調的状況の本質」について鋭い洞察のある本
前回述べた「統合失調的状況の本質」について、深く鋭い洞察をしている本もある。一つは、R.D.レイン著『ひき裂かれた自己』(みすず書房)。もう一つは、木村敏著『心の病理を考える』(岩波新書)である。
いずれも、一般的な本とは言い難く、そう読みやすい本でもないため、『関連書籍』には入れていない。しかし、たとえばドイツ系の精神病理学者の書いた本などに比べれば、はるかに読みやすく、明解な内容をもっている。分裂気質の者に対する共感と鋭い観察から、もたらされたものであることも分かる。
ただし、「本質的な観点」といっても、その視点はかなり限られている。前回述べたところでいえば、主に、分裂気質の者の「自己の脆弱性」、「自己の築きにくさ」という点にしぼられている。「圧倒的な他者」ということそのものへの着目はないに等しい。
それでは、「理解」として不十分であり、具体性に欠けることにもなるが、そのような視点に関する限り、非常に説得力のある、鋭い洞察であることは疑いない。だから、興味のある人には、ぜひ読んでもらいたい。
私も何度か読んでいるが、既にかなりの年月がたつので、改めて読み直して、私の考えとも照らし合わせながら、少し考察をしてみたいと思っている。
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