「ボタン一つで…」
前の日記でも述べたと思うが、一連の体験時に、「アニマ」と名付けた「精霊」に言われた言葉で、強く印象に残っているものがある。それは、『そのうち、ボタン一つで朝になるのよ』というのものである。
これは、私が、「霊界の境域」に陥って、ほとんど「現実」から遊離した状態で、現代の文明やその将来の発展について思いを馳せているときに、聞いた言葉である。この、淡々とした、しかし魅惑的な言い方で、鋭く心につくように言われた言葉には、ぎくりとさせられた。
私は、当時、こういった「精霊」たちの言葉を、ほとんどそのまま、「真に受ける」傾向があった。たがら、この言葉も、将来、何か、「人工太陽」のようなものかできて、ボタン一つで、文字通り「朝」になるようになる、ということを言っているのかと思った。「アニマ」が、地球の将来のことを分かっているかのように、受け取ったのだ。
恐らく、多くの人は、私に限らず、統合失調症の人が、こういう「声」を、どうして「真に受けて」しまうのか、そんなに「力」のあるものとして受け取ってしまうのか、理解できないことだろう。実際、これが、「理解」できるか否かが、統合失調症「理解」の鍵と言ってもいいほどである。しかし、やはり、これには、実際に「聞かない」ことには、分かりようがないところがある。
実際に、そういう「声」には、人間のものを超えた、「力」があると受け取れる要素があるのである。それまでに聞いたことのない、逆らい難く、「真に受ける」しかないと思わせるだけのものがある、ということである。それを、具体的に、どのように説明するかは難しいが、要するに、「人間的な感情」を超えた感じ、「確信的」な感じ、「圧倒」させる要素、強い「リアリティ」(現実感)などとでも、表現するしかないだろう。
もっとも、実際に、このような「声」を聞く多くの人も、それらを、すぐに、「人間を超えた」ものと受け取るわけではない。むしろ、「未知のもの」に対する恐れから、それまでの「現実」にできるだけ引き寄せて、身の周りの人間のものとして、受け取ろうとする。
しかし、その場合でも、それらが、なぜそんなに、「影響力」をもった言葉として受け取られるのかというと、その言葉に潜む、先にみたような要素、つまり、人間的なものとはとても思えない、「確信的」な感じ、「圧倒」させる要素、強い「リアリティ」(現実感)などによるのである。
ヤスパースが、「実体的意識性」という言い方で、これらのことを言い表そうとしているとすれば、やはり、それこそが、「統合失調症」をもたらす、最も強い影響力なのである。
いずれにせよ、私も、当時、特に初期の頃は、こういう言葉に強い影響を受け、翻弄されていたから、多少、「非現実的」な内容であっても、それをそのように「真に受け」て、受け取ることが多かったのである。
人間は、いざ、 「未知のもの」に接すると、どうしようもないほど、弱気になり、依存的になるということでもある。
しかし、後に分かったことだが、この『そのうち、ボタン一つで朝になる』という言葉は、全く、ある意味で、「見事」な「皮肉」なのである。
我々の現代文明の発展とは、要するに、何でも、ボタン一つで解決しようという、「便宜性」の追求だったと言える。不都合なこと、いやなことも、いずれ、全て、ボタン一つで、解決できるかのような、「幻想」ももった。「アニマ」は、その我々のあり方を皮肉って、『そのうち、ボタン一つで朝になる』と、言ったのである。そう、実際には、ボタン一つで、朝になるわけはないのだ。
「アニマ」に限らず、「精霊」は、よくこういった、鋭い「皮肉」を言う。「アニマ」のような、基本的には、好意的な存在でも、そこには、「反人間的」といえる要素が、感じられる。また、人間的な意味での、「モラル」や「拘り」はないから、ある意味、平気で「うそ」を言う。人間が、それに影響を受けるようだと、ますます図に乗って、その傾向を増す。
だから、こういった「声」の内容を「真に受ける」ことなどは、ばかばかしいと、今では思う。しかし、初めから、このように思える人などは、まずいないはずである。
しかし、それにしても、この「皮肉」は、あまりにも、「真をついている」、鋭いものなので、今も、強く印象に残っているのである。
思えば、前々回みたような、薬で、「精神的な病い」を治そうとする発想なども、実は、何でもボタン一つで解決しようとする発想と、同じことと言える。「ボタン」が「薬」に変わっただけである。これは、実際には、「ボタン一つで朝にしようとする」ことと同じくらい、ばかげたことかもしれない。
もし、このことを、「アニマ」の皮肉に引き寄せて言うなら、次のようになるだろう。「そのうち、薬一つで、どんな病気も気分も治るのよ」。(※)
※ これでは、いかにもインパクトが弱く、「そのうち、ボタン一つで朝になる」という元の言葉にも近寄れていないので、「病気も気分も治る」といった意味合いを含めつつ、次のように言いたい。
「そのうち、薬一つで、晴れになるのよ」
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