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2010年11月 6日 (土)

「分裂病」と周辺領域の病との混乱

シュタイナーは、「精神的な病」について、意外にも、物質的な「原因」や「治療法」を指摘していることが多い。「分裂病」についても、胎児期または幼児期に、(神経を阻害する)「良くない」食べ物を食べたことが、原因だということを言っている。(『病気と治療』)

しかし、シュタイナーは、ここで、「分裂病」を「早発性痴呆」として説明しており、早い時期に、知的な機能の障害をもたらすことと述べている。ここで、述べられている、「分裂病」というのが、現在にいう典型的な「分裂病」(統合失調症)を指していたかどうかは、疑問なのである。むしろ、何らかの脳の障害に基づき、知的機能が阻害される場合を、かなり広く含んでいた可能性がある。(※)

実際、19世紀から20世紀初頭の頃には、医学的にも、「分裂病」はまだ十分定まった概念ではなく、さまさまな周辺領域の病と、混交していたり、混同されたりしたようである。

そこで、この時期の、医師や他の者の「分裂病」に関する言説には、周辺領域の病との混同がないか、注意が必要である。


前にも述べたが、精神科医のウィックランドは、80年ほど前、霊能者である奥さんとの共同研究で、精神的な病の多くに、人間の霊の「憑依」によるものがあったことを明らかにしている。(『医師の心霊研究30年』または『迷える霊との対話』)そして、「分裂病」の多くの場合も、そうであったと述べている。

しかし、著者が、例として挙げているものの中に、現在でいう典型的な「分裂病」と解されるものは、一つも見つからない。恐らく、ウィックランドが、「分裂病」と言っているものの多くは、現在では、「解離性障害」ないし「多重人格性障害」にあたるものと思われる。この時期には、これらの病の間にも、多くの混同があったようなのである。

もっとも、実際に、これらの病の間には、似た面も多く、現在でも、医学的にも、間違いなく診断されるかどうかは疑わしいものである。また、現在でも、一般に、両者の病を、明らかに混同している者も多いと思われる。「霊能者」でも、これらを混同しているため、「分裂病」を人の霊の「憑依」が原因と考えたり、言ったりしている者は、多いと思われるのである。

これには、私もあえて使っているが、「分裂」という言葉も、誤解の元なのかもしれない。「分裂病」は、人格がいくつかに「分裂」する病というイメージを、もたらす可能性があるからである。実際には、この意味での「分裂」というのは、医学的には、「解離」といわれ、「多重人格性障害」のことを意味する。これは、「分裂病」とは異なり、「精神病」ではなく、「神経症」の一種とされている。

実際、「人格」が、いくつかに分断されるような「みかけ」を有するから、「分裂」というイメージと重なる面はあるだろう。しかし、その現に現れ出ている「人格」そのものは、それとしてのまとまりを一応もつので、「分裂病」のように、見るからに、全体としてまとまりを欠く訳ではない。社会生活にも、必ずしも、大きな支障を来す訳ではない。

「分裂病」の場合の「分裂」というのは、「思考」、「感情」、「意志」の機能が、分裂するような状態を示すというもので、「人格」が分断するという意味の「分裂」ではない。

いずれにしても、「分裂病」と「解離性障害」ないし「多重人格性障害」とは、混同される可能性があり、そのことが、それぞれの病の「原因」なり「本質」を考える場合にも、混乱をもたらしている場合がある。

最近では、精神科医小栗康平が、ウィックランドと同じように、やはり霊能者のセラピストと協力して、精神的な病に、人間の霊の「憑依」によると解される場合があることを明らかにしている。(『マイナスエネルギーを浄化する方法』)

しかし、ここでは、著者は、このような人間の霊による「憑依」と解されるものを、はっきりと、「解離性障害」ないし「多重人格性障害」、あるいは「境界性人格障害」などの場合に限定している。「分裂病」の場合は、脳の機能障害に基づく病気であるとして、除外しているのである。

このような区別は、基本的に、「分裂病」と周辺領域の病との混乱を避ける意味で、正しい態度というべきである。ウィックランドの「誤り」を正すという意味でも、必要なことである。また、自らの見解を、安易に拡張しないという、謙虚さの現れとしても、頷けるものである。

しかし、実際には、既にみたように、「分裂病」と「解離性障害」とは、必ずしも画然と区別できるものではなく、互いに混交するような領域もあるのである。だから、「分裂病」の場合には、脳の機能障害で、「解離性障害」の場合には、人間の「霊」による「憑依」であるなどと、画然と、両極端の区別ができるというのは、いかにも不自然なことである。

著者は、恐らく、「分裂病」の場合にも、何らかの霊的な影響を予想していると思われる。「解離性障害」の場合に、如実にそれを「見た」ならば、そう考える方が自然である。しかし、確たる確信はもてないので、「分裂病」の場合には、一般に医学的にいわれている説明をあげるに止めたものと思われる。そこには、「解離性障害」の場合に、あえて、一般の医学の見解と正面から対立する説明をしているので、「分裂病」については、一応、一般の医学的な見解に従うという、いわば「妥協」を図った面もあろうかと思う。

しかし、逆に言えば、それだけ、「解離性障害」の場合については、確かな確信があるということである。また、それをあえて発表するだけの、準備が整っているということでもある。そして、そこには、「良心」に基づき、あえてそうしないではいられないという思いも、伝わって来るのである。

ただ、「分裂病」の場合について言えば、たとえ、「霊的なもの」の影響が示唆されるとしても、「解離性障害」の場合のように、はっきりとそれを確認することは、できなかったはずなのである。つまり、「分裂病」は、霊能者による「説得」などで、「霊」が抜け出たことにより、はっきりと「治癒」が認めらるというようなものではない、ということである。残念ながら、「分裂病」の場合に、そのような「霊的」な影響を、何らかの形で、はっきりと「見える」ように捉えるということは、まだまだ難しいことと思われる。

※ むしろ、シュタイナーの場合で言うと、何ら「分裂病」との関連は示されていないが、『いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか』で、「霊界への参入」が起こるときに、生じるとされる、「人格の分裂」(思考・感情・意志の自然な統合が外れること)というのが、結果的に、最も適切な「分裂病」の説明になっているというべきである。ただし、分裂病に「物質的な基盤」ないし「側面」があるということ自体は、確かなことで、これについても、いずれ述べてみたい。

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