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2010年4月 3日 (土)

「分裂病」以外の場合と「幻覚」

前々回みたような、「他の多くの者と共有できない知覚」というものは、「分裂病」以外にも多くある。誰もが、経験するものとしては、「夢」がそうだし、少し特殊な例としては、臨死体験者が、臨死状態で体験する「知覚」、霊能者などの知覚する「霊的知覚」、宗教家などの体験する「神秘体験」などがある。

そして、これらにおいても、「分裂病」にいう「幻覚」という「イメージ」は、大きく影響を与えている。これらも、「分裂病」の場合と同様、「現実」には「ない」ものとしての「幻覚」、「非現実」的で「あやふや」なものとしての、「幻覚」という「イメージ」に引き寄せられて、みられる場合が多いのである。

あいるは、逆に、これらの体験をした者は、それを「分裂病」にいう「幻覚」とは、別物であることを強調しようとする。「分裂病」にいう「幻覚」という「非現実」なものがあることは前提として、これらの体験は、そのようなものとは別の、「真実」の体験である、と言おうとするのである。

しかし、これらは、いずれにしても、「分裂病」の「幻覚」という、実態のはっきりしない、「あやふや」な「イメージ」に引きずられての、「不毛」な議論と言うしかない。「分裂病」の「幻覚」という「イメージ」は、このように、広く「一人歩き」してしまっているのである。

ただ、このような、「他の多くの者と共有できない知覚」というものは、実際、「夢」以外には、多くの者が、なかなか経験するものではないことから、致し方ない面がある。その「知覚」というものが、一体どのようなものなのかが、まさに「イメージ」できず、最も、「分かった」気にさせる、「幻覚」という「言葉」で、それらを「計る」しか、手がないのである。しかし、その「分かった」気にさせる「幻覚」という言葉自体が、「分裂病」の場合においても、既に、ピントを外してしまっている。

実際には、「分裂病」の「知覚」にしても、臨死体験者の「知覚」にしても、霊能者などの「霊」の「知覚」にしても、宗教家などの体験する「神秘体験」にしても、「他の多くの者と共有できない」が、「現実」そのものとしての「リアリティ」を有する「知覚」の、一つの「バリエーション」に過ぎない。

そこには、「見方」により、さまざまな違いを想定できようが、「知覚」として、「本質的」な区別がある訳ではない。ただ、「分裂病」の場合は、「捕食者」等によって、誘導された「知覚」という意味で、「混乱」と「破壊」の性質を帯び易いというだけのことである。

ところが、それが、「現実」には「ない」ものとしての、「幻覚」という「イメージ」をはめられることから、前述のような、「不毛」な議論が起こってしまう。そもそも、「分裂病」についての「イメージ」そのものが、「理解」とかけ離れたところで、いかに、「一人歩き」しているか、ということでもある。

これらのことを「解決」する一つの手としては、「幻覚剤」でもよいから、とりあえず、誰もが、一度は、このような「他の多くの者と共有できない」が、「現実」そのものの「リアリティ」を有する「知覚」を体験してみることである。

未開社会などでは、このようなことも、誰もが経験すべき、一つの「イニシエーション」として、儀式に組み込まれていたようである。かつて、「LSD」が合法であった頃には、このような試みをした者もかなりいて、それなりに効果をあげてもいた。(日本では、精神科医加藤清など)だが、残念なから、今は非合法なので、とりあえず、このようなことも、難しい状況になってしまった。

ただ、最近は、「ヘミシンク」とか、あまりポピュラーとは言えないが、「アイソレーションタンク」による「瞑想」など、外にも、このような「幻覚」状態を誘導する方法が、開発されてはいる。「催眠療法」や、ユングの「能動的想像」などのセラピーもそうである。また、自然発生的な「臨死体験」や、「体外離脱」体験も、より多く起こるようになってきているようである。何も、それらに、「深入り」する必要がある訳ではなく、一度でも、体験してみるだけで、「見方」が大きく変わる可能性があるのである。

このような体験が、一度でもあれば、少なくとも、「幻覚」というものが、すぐそれと「分かる」ものとか、「あやふや」で「非現実」的なものとかの、「誤解」は、なくなるはずなのである。「分裂病」にいう「幻覚」というのも、その場合と異なるものではないというとこである。「分裂病」の「イメージ」も、少なくとも、その点においては、いくらか解消されるはずである。

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