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2010年3月26日 (金)

『マイナスエネルギーを浄化する方法』

前に,アメリカの精神科医ウィックランドの『医師の心霊研究30年』(または『迷える霊との対話』)に触れた。アメリカの例だが、「浮遊霊」または「地縛霊」が、いかに人に取り憑いて,様々な精神的障害を起こしているかを、明らかにした本である。

これを読んだとき、日本の精神科医にも、このような研究は可能のはずだし、実際に、行っている者もいるはずだが、表に出ることはないのかと思っていた。

しかし、この度、まさに、それそのもののような本が出された。小栗康平という精神科医の『マイナスエネルギーを浄化する方法』(ランダムハウス講談社)という本である。

私は、本屋でこのタイトルをみたときは、「また、もっともらしいセラピーかなんかの本が出てる」と、素通りしていたのだが、なぜか、やたら目につくので、つい手に取ってみたら、私の興味にも関わる、精神科医によるまじめな本であることが分かって、読んでみることになった。

実際、ウィックランド同様、霊的なものの「憑依」という、一般には、敬遠され、誤解され易い問題に、よく正面から真摯に取り組んでいるのが伝わる。また、分かりやすく、読み易く、説得力をもって、述べられている。

著者は、元々、「霊」的なものを信じていなかったのだが、片岡(仮名)という霊能者との出会いを通じて、(ウィックランドの場合は,奥さんが霊能者だった)、自分の患者の中に、「浮遊」する霊の「憑依」を受けているために、精神に障害を起こしている者があることを、まざまざと見せつけられる。そして、その「浄霊」の効果には、厳然たるものがあることを確認する。「霊的」なものそのものは、十分理解できなくても、それが、確かにある「事実」を反映することは、疑いがないと認めざるを得なくなるのである。

そして、著者は、臨床家らしく、それが、一個の「事実」であるならば、何らかの形で、精神医療にも取り込んで行く必要があると考え、霊能者片岡と協力しながら、それを実践するようになる。

タイトルの「マイナスエネルギー」というのは、そのような「憑依霊」を呼び込む元になる、「エネルギー」のことを言っているようだ。が、実際上は、「霊」という言葉を使わずに、その「浄化」ということを言い表そうとする、苦肉の策なのだろう。しかし、私と同じように、このタイトルのために「素通り」してしまった人も、結構いるのではないか。(かえって「うさん臭く」聞こえてしまうのは、皮肉なことだ。)

また、興味深いのは、「多重人格性障害」の「別人格」には、「憑依霊」の場合と、自己が「解離」した「別人格」の場合の、両方があることが分かることである。片岡は、「憑依霊」の場合は、説得し、諭した後、「霊界」に帰す。「別人格」の場合は、説得し、諭した後、「本人」と「統合」させるということで、これらにうまく対処する。さらに、「多重人格性障害」ではなく、表面に「別人格」として現れる訳ではないが、内在的に、このような「別人格」に相当するものが、隠れている場合が多いことも発見する。これは、要するに、誰にでもある「内なる別人格」のことだが、それが、精神的な疾患に大きく作用している場合があるのである。(これは、これまでにみたところでは、トールのいう「ペインボディ」と一番近いだろう。)

そして、このような、「内なる別人格」の場合にも、それを呼び出して、説得や諭すことで、「本人」との「統合」を図ることが、非常に有効であることが分かる。著者も、片岡にならって、その方法を自分なりに習得することで、USPTという治療法を新たに生み出すことになる。これは、「前世療法」にも、応用できるという(「過去生」の自分も、一種の「内なる別人格」なので、当然ともいえる)。これなどは、「霊能者」と「医師」との協力によってこそ、新たに生み出された治療法として、とても興味深い。

「分裂病」との関係について言うと、ウィックランドは、「分裂病」の場合にも、このような「迷える霊」による「憑依」のケースがあるかのような書き方をしていた。が、この著者は、「多重人格性障害」(解離性障害)や「境界性人格障害」などの場合に、限定して述べていて、「分裂病」などの精神病の場合には触れていない。そこには、慎重な姿勢が伺われて、好感がもてる。

恐らく、「分裂病」の場合にも、何らかの「霊的な影響」は予感していることだろうが、今のところ、そこまで踏み込むのは、無理というものである。何度も言うように、それは、「人間的」なものではないし、一般の「霊能者」の自由になるようなものでもないからである。しかし、何しろ、このように、「人間」の「憑依霊」によって、精神的な障害が起こされることがあることを、明らかにするだけでも、大きな一歩である。

さらに、この著者の例は、「霊能者」と「精神科医」との、望ましい連携関係を示してくれているという点でも、貴重と思う。「霊能者」と「精神科医」には、普通、それぞれに、「思惑」や、「縄張り意識」があったりするから、なかなかこのようなことは、適わないはずである。(沖縄では、霊能者であるユタと医師との連携ができているとも言われるが、精神科医との連携となると怪しい。)、それだけに、今後に向けては、一つの模範的なケースになってもらいたいものである。

恐らく、この本は、良くも悪くも、今後かなりの反響をもたらすはずで、その成り行きも見守りたい。

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コメント

小栗康平著『マイナスエネルギーを浄化する方法』(ランダムハウス講談社)
の改題新版(加筆・修正版)が、
『症例X-封印された記憶』(ジービー)
として出されていることに気づいたので、コメントしておきます。

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