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2005年12月 8日 (木)

10 「症例」の紹介

このような3段階の発展段階を示す、一つの典型的なケースが、「症例A」として挙げられているので、その概略を紹介しておこう。

[対人恐怖段階]
大学卒業後アパート生活をしていたが、30過ぎ頃から、よく眠れなくなってきた。毎日酒を飲むようになった。不況が悪化する中、自分がリストラの対象なのではないかと疑念を持ち始めた。仕事の疲労、心労のため不眠も悪化し、自分が日中もアルコール臭をさせているという噂が社内に流されているように感じ始める。

[第1 パラノイア段階]
あるとき、上司に誘われて飲みに行く。遅くなったので、カプセルホテルに泊まるが一睡もできない。そのまま翌朝出勤すると、朝礼で事業報告をする予定だったのに、そこには上司3人しかいない。おかしい、これは自分をやめさせる筋書きだ、と思い込んで、そのまま会社を飛び出る。すると、途中の電車でも常に人に見張られ、付け狙われている。カメラ中継者が止まっているが、それは「会社の指示で自分を撮影するため」なのだと思い込む。

[第2 幻覚・妄想段階]
その後も家から出ると、人に付け狙われる。目指す駅で降りると、黒い車が止まっている。この頃から周囲の風景も変わり始め、他人との間に「現実感」がなく、白黒のような世界になる。付け狙われる感じは強くなる。家に帰ると、テレビまで自分の悪口を言っている。アナウンサーが、自分を誹謗・中傷してくる。毎日悶々とし、一睡もできなくなる。

[第3 つつぬけ・させられ段階(夢幻様状態)]
翌朝、助けを求めて父親宅に行く。そこで「宇宙人」が現れ、宇宙人が地球に侵入し、この宇宙人から監視されていると感じる。一方、日本の国家レベルで自分に何事かを隠していると思う。父も弟もマインドコントロールされ、自分も含めた3人が何かの実験台にされているとも思える。

たまらず「神」に助けを求める。無神論者の彼に「神」が感じられ、神は地球だと感じられた。その神とゲームをし、地球を賭けて負ける。何万年来の人類の歴史を自分が壊したと恐怖に襲われ、世の中のルールが破綻し、この世は終わると思う。その夜明け、精神科に行く。焦燥の極限で精神科に着くと、現れた医師が鳥に見え、「鳥類を代表して自分を捕まえに来た」と思う。以後、彼の記憶は全く途絶える。

しかし、その後、この者は、入院後3ヶ月後には、元気に退院したということである。

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