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2005年10月20日 (木)

3 「症状」と「具体的な行動」について

これまでみてきたのは、精神医学が病気の「症状」として記述するものである。しかし、現実には、これらの「症状」があるということだけで、それが病気として治療や入院の対象になるということではない。実際上は、それらの症状とされるものに基づいて、ある具体的な行動が行われて初めて、それが治療すべき病気として、いわば「公的に」遡上にのぼるのである。

具体的な行動とは、例えば、前回、前々回みたような被害妄想の場合、錯乱して、周りや警察などの機関にその被害を訴えて回るとか、あるいはその加害者とされる者に、何らかの防衛措置や報復措置に出る、などである。あるいは、「自分は誰々の生まれ変わりである」として、また「あることをしなければ日本や地球が破滅する」などとして、人や組織に何かを強要して回る、などである。

これらの行為が、周りの者や社会的に放置できないものとなったときには、何らかの処置をせざるを得ない。実際、家族その他の者に連れられて、精神病院に入院(「措置入院」又は「同意入院」)となるのは、このようにして、周りの者や通常の機関では、手に負えなくなったことによるのが多いのである。

もちろん、その場合にも、病院ではそれらが分裂病の「症状」として認められるという認識の下に入院が是認される。しかし、ことの順序としてみても、それをある病気の「症状」というのは、あくまで、観念的、事後的にそれらの行動の背後にあるものとして、つけられた認識に過ぎない。現実にあるのは、それらの症状とされるものに基づくとは考えられるにしても、上のような、まさに人を「困惑」させ、「恐怖」させる行為そのものなのである。

とりあえずそこから、分裂病の問題の全てが始まっているということは確認しておかなくてはならない。それが「病気」とされ、治療すべく入院の対象となるのも、そのような放置できない社会的な行為をする者を「隔離」し、「収容」しなければならないという現実の問題がまずあるのである。これは、精神医療(学)誕生の歴史をみれば、更にはっきりすることだが(後にそれも試みるつもりだが)、現在においても、そのような面は確かにあるのである。

そこで、この狂気についての日記のテーマである、「分裂病を防ぐ」というのは、何よりもまず、このような行為をできる限り、「防いでいく」ということ意味する。そして、それはもちろん周りの者や社会的環境の影響を受けるが、現時点ではまず誰よりも、本人自身においてそうする外ないのである。病院が関わるのは、既にみたように事後的であるし、たとえ本人自身が自ら治療に赴くといったことが可能な場合でも、そこにこれらの行為を防いで行くという要素はやはり必要になる。

これらの行為を防いで行くというのは、本人自身のためであるのはもちろんとして、分裂病が社会的に手に負えない、異様で迷惑な病気である、というイメージをできるだけ払拭するためでもある。しかし、実際のところを言うと、初めの総括でも述べたように、これらの(幻覚や妄想という)症状とされるもの自体の現れを防いで行くというのは、非常に困難なことだからである。

ところが、それらの症状とされるものが現れることと、それに基づいて現実に行動を起こしてしまうことの間には、ギャップがある。そこで、その行動の方を防いで行くことは、必ずしもできないことではないからである。症状とされるものが「現れる」ことと、それに「囚われる」こと、「振り回されること」とは別なのである。そして、症状とされるものが「現れる」こと自体を、否定的に捉える必要は必ずしもないのである。

もちろん、それは簡単なことなどではなく、いくつか前提となる条件がある。その大きな一つとして、これらの症状とされる状態にあっても、それが一般の精神医学においては、まさに「分裂病」の「症状」とされるものだと気づくぐらいの認識は必要である。

ここで、「症状」とされるものをかなりに具体的にみてきたのも、そういった認識に役立てたいと思ったからである。何も詳しい知識が要求されるというのではなく、ここに述べられた程度のこと(特に、前々回の「ハンドブック」の記述は、かなり具体的、イメージ的に把握できるものであったはず)を予め知っていれば、実際にそれに似た状況に陥った時に、それが客観的には、分裂病の症状とされているものであることは、十分認識し得るのである。

但し、実際には、それが様々な理由で難しいのも、また確かなことである。それがなぜなのかという点は、後に、いわゆる「病識」の問題とも絡めて、改めて詳しく考察したい。

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